演劇博物館 100年の物語 | 早稲田大学 校友会
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演劇博物館 100年の物語

創設者・坪内逍遙とミューゼアムの夢


坪内逍遙ってこんな人

「ミューゼアム設立」の夢に向かってまい進し、ついには演劇博物館を創設した坪内逍遙。その情熱に満ちた生涯を追いかけます。

坪内逍遙さんの写真

つぼうち・しょうよう/ 1859(安政6)年岐阜県生まれ。東京大学文学部を卒業後、東京専門学校の講師となり、早稲田大学の設立に深く関わる。1885(明治18)年に発表した『小説神髄』で一躍有名となり、小説・演劇で多数の作品を残す。1935(昭和10)年没。

撮影=蔦野 裕 漫画・イラスト=くぼあやこ 写真提供=演劇博物館

尽きることのない情熱で文学・演劇界をけん引

坪内逍遙といえば、真っ先に思い浮かぶのは『小説神髄』や『当世書生気質とうせいしょせいかたぎ』を書いた小説家としての顔だろう。もしくは早稲田大学設立の立役者「早稲田四尊」の1人として記憶している校友もいるかもしれない。
しかし、逍遙の人生をひもとくと、そればかりには収まらない業績の幅広さに驚かされる。小説家として活躍したのは主に明治時代の前半であり、以降は劇作家、演劇研究者としての活動が主だった。その傍ら、翻訳家、教育者としても功績を残している。
そんな逍遙を一言で表すならば、まさしく近代日本のパイオニア。どの分野でも率先して改革・改良を行う姿勢は、後に続く世代を大いに励ました。

時代の変化の中で先陣を切る開拓者

文明開化の時代には小説の改良を呼びかけ、大正デモクラシーの時代にはページェント(民衆劇)運動を主導。社会の変化を敏感に察知し、さまざまな文芸運動を開拓した。

小説家、翻訳家、劇作家、演劇研究者

評論『小説神髄』や小説『当世書生気質』が有名な逍遙。その他にもシェークスピアの全作品を個人で翻訳し、歴史劇の傑作を残すなど、文芸分野で多方面に活躍した。

貸本屋の本を全て読み切るほどの読書家

貸本屋とは江戸時代の図書館のようなもの。逍遙は幼少から足しげく通い、17歳の頃には江戸時代の戯作げさく(小説)はほとんど読了したと豪語している。

教育者としても一流。後進育成に力を注いだ

教壇に立った時には、熱意にあふれた授業で学生からの人気が高かった。逍遙が編さんに携わった小・中学生用の『国語読本』二種は、国語教科書の傑作として高く評価されている。

生前の私物
生前の私物

演劇博物館に収められている生前の私物。収蔵庫には逍遙専用の部屋もあり、原稿や文房具が棚いっぱいに詰め込まれているのだとか

逍遙先生をもっと知るための三つのトピック

TOPIC 1 演劇の改革者
演劇の経験から声がよく通る

野外でマイクもなく、1時間にも及んだという演劇博物館開館式での謝辞。演劇の役者指導で鍛えた声は最後まで観客席の隅々に響き渡り、絶妙な話術に参列者は魅了されたと伝わっている。

日本における舞台監督の先駆け

明治期の日本では演出に全面的な責任を持つ舞台監督の役割が浸透していなかった。役者に熱心な演技指導を行い、舞台装置も手ずから設計した逍遙は、日本で最初期の舞台監督だった。

「近代演劇の父」、坪内逍遙

歌舞伎とシェークスピア演劇の比較研究で大きな功績を上げた逍遙。『ジュリアス・シーザー』を『自由太刀余波鋭鋒じゆうのたちなごりのきれあじ』として歌舞伎風に翻案するなど、大胆な演劇改革を行った。

TOPIC 2 早稲田との関わり
文学科の創設者にして花形講師

早稲田大学の前身、東京専門学校で花形講師として活躍した逍遙。受け持ったシェークスピア講義は早稲田独自のものであり、後に「早稲田といえば文科」と言われる時代のきっかけに。

伝統の「最終講義」を初めて実施

早稲田大学伝統の最終講義は、逍遙が1927(昭和2)年に大隈講堂で行った「シェークスピア最終講義」から始まった。

早稲田大学校歌の「わせだ わせだ」を発案

相馬御風が作詞し、東儀鉄笛が作曲した早稲田大学校歌。「わせだ わせだ」のエールを追加するよう提案したのは逍遙だった。

TOPIC 3 情熱と挫折──諦めない偉人
シェークスピアの試験に落第したが……

東京大学文学部の試験でシェークスピアの『ハムレット』に関する試験が出題。逍遙は落第してしまいひどく落胆するも、かえって勉強に熱が入り、シェークスピア研究にのめり込んだ。

構想が壮大すぎて実演できない脚本も

当時としては革新的すぎる舞台美術や演出の数々がひらめいた逍遙。残念ながらそのほとんどが実現せず、自作の上演では落胆することが多かったが、演劇の改革自体を諦めることはなかった。

参考資料

『早稲田大学百年史』(早稲田大学)、『演劇博物館五十年 昭和の演劇とともに』(早稲田大学坪内博士記念演劇博物館 1978年)、『演劇人 坪内逍遙』(早稲田大学坪内博士記念演劇博物館 2007年)

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