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日本で唯一の「ユニバーサルシアター」
CINEMA Chupki TABATA 代表 平塚千穂子
聴覚や視覚の障がいがある方、車いすが必要な方、子育て中の家族など、さまざまな理由から劇場に行くことをためらってしまう人が安心して映画を楽しめるように、という考えに基づき日本初のユニバーサルシアターを運営。上映する全ての映画に日本語字幕、音声ガイドを用意。「Chupki(チュプキ)」製作・配給の映画『こころの通訳者たち』が10月22日よりK’sCINEMAにて公開。
SDGs
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ひらつか・ちほこ/1972年東京都生まれ。97年教育学部卒業。飲食店勤務を経て、名画座「早稲田松竹」のスタッフに。2001年4月、視覚障がい者の映画鑑賞をサポートするバリアフリー映画鑑賞推進団体「City Lights」を設立。14年に上映スペース「Art Space Chupki」を開き、月4回の上映会を開催。16年9月に「CINEMA Chupki TABATA」をオープン。
取材・文=村上佳代、撮影=布川航太、写真提供=CINEMA Chupki TABATA
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客席は約20席。入り口付近に車いす用スペースもある
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全てのシートに音声ガイド用イヤホンジャックを用意。耳の聞こえにくい方は、映画本編の音も増幅できる仕様に
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小さな子どもを連れた方に向けて親子鑑賞室を用意。完全防音でスクリーンが見える窓とスピーカーがあるため、子どもが泣き出しても安心して鑑賞できる
あらゆる人が映画鑑賞を楽しめる 開かれた映画館
障がいがある方も映画を楽しみたい気持ちがある。そう気付いた平塚千穂子さんは、視覚障がいのある方に向けて映画の音声ガイド(テレビの副音声のように場面状況を声で説明)をするボランティア団体を立ち上げた。
「目が見えないから映画を楽しめないと諦めていた人々が喜んでくれたんです。想像以上に反響があり、いろいろな作品を見たいとリクエストもありました。しかし、映画館や場所を借りて開催する上映会という形では制限があるため、より多くの方に利用してもらえるように自分たちの映画館を持ちたいと考えるようになりました。地道に活動を続けていき、念願がかなったのが2016年。クラウドファンディングなどを行い、多くの方の支援を受けて映画館をオープンしました」
さらに、聴覚障がいのある方にも対応するため、邦画にも日本語字幕を付けることに。配給会社が音声ガイドや日本語字幕を用意しているケースもあるが、大多数はいちからガイドと字幕を作成する必要がある。上映作品が決まるとボランティアの力も借りて急ピッチで準備。さらに、最寄り駅からの移動サポートや文字通訳のサポートも行っている。誰にとっても開かれた映画館のチュプキには、健常者の観客も多く訪れる。
「見えない人は耳で映画を楽しむ。聞こえない人は目で映画を楽しむ。いろいろな鑑賞方法があることを知り、一緒に作品を共有すると、新しい気付きがたくさんあるはずです」
バリアフリーからユニバーサルへ。誰もが映画を当たり前に楽しめる世界を目指し、チュプキの挑戦は続いていく。
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ロビーには大きな樹が描かれている
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生い茂る青い葉には設立時の支援者やサポーター会員の名前が
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入り口横にあるモザイクタイルでデザインされたChupkiの看板。目が見えない方でも触って分かるように配慮されている
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