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進化する図書館
洗練された空間で、飲み物を片手にパソコンを開き、会話をしながら学習を進める学生たち。本を読むための静かな空間というイメージが強かった従来の大学図書館は、リニューアルを経て、大きく変化した。
改修の中核となったのが、「LC(ラーニング・コモンズ)」の拡充だ。LCは、自由に集まり意見を交わす現代的な学習を支援するための機能で、アメリカの大学図書館で普及し、近年日本でも導入が進められている。可動式のテーブルや椅子、無線LAN、学術情報の充実、学習を支援する人的サービスなどが特長だ。
早稲田大学図書館では、「Waseda Vision 150」が掲げる「対話型、問題発見・解決型教育への移行」の一環として、2017年から19年にかけて、LCを中央図書館で拡充、所沢・理工学図書館に設置。現在、多くの学生や研究者、校友に利用されている。
進化した大学図書館の姿を見てみよう。
撮影=高橋 榮
※掲載内容は2019年12月時点のものです。
中央図書館 2階
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2019年4月にリニューアルオープンした中央図書館。会話やパソコンの使用が可能で、ふた付きの飲み物の持ち込みも許可されるLC(ラーニング・コモンズ)は、「クリエイション(2階)」「ディスカッション(2階)」「ブラウジング(3階)」「ワーク(3階)」と目的別に設計された四つのエリアに分かれ、学生は作業内容に合わせて座席を選ぶことができる。
一方、静寂を求められる従来の図書館のエリアは、LCが入る「Active Area」とはガラスの遮音壁で区分けされて共存する。エリア内はさらに「Quiet Area」「Silent Area」「Super Silent Area」に分かれ、段階的に可能な作業が規定されており、静かな空間を求める学生はここで作業する。会話などが可能になることが、従来の図書館利用者の妨げにならないようにすることは、改修の課題であった。Active Areaのシックな内装は、極度ににぎやかになるのを抑制するためのもので、新旧の図書館機能が調和するように設計されている。
2階のLCは、グループでの学習のためにつくられた空間。「クリエイション(コモンズ1)」は、パソコンを使った共同作業や、LA(ラーニング・アシスタント)による学習支援を受けることが可能で、リポートや資料の作成に適している。「ディスカッション(コモンズ2)」は、対話による意見交換のためのエリアで、グループ学習に特化させた「グループ学習室」などが設けられている。
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LAデスク。LAは大学院生が担当。学部生に対し、資料の探し方やリポートの作成方法についてアドバイスする
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「LA(ラーニング・アシスタント)デスクで学生をサポートしています。資料探しはパソコンでも可能ですが、『どのような資料にあたればいいかが分からない』という学生の声を聞き、探し方を提案するのが私たちの役目です。約5人のスタッフがローテーションを組んで担当し、1人~2人のスタッフが常駐しています。学生と話すと、自分の研究にも役立つ気付きがあるので刺激的です」 佐藤早樹子(文研博後4年)
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グループ学習室。外部とはガラスの遮音壁で区切られており、話し合ったり、声を出して語学の勉強をしたりすることができる。可動式のテーブル、椅子、ホワイトボードは人数に応じて動かすことができ、プロジェクターも設置されている
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「ゼミのメンバーで発表の準備をするとき、グループ学習室を利用します。壁一面のホワイトボードを使って、意見を出し合いながら概念図やプレゼンシートをまとめられますし、学内Wi-Fiを使用して、各自のファイルを共有することもできるので便利です」 高山聖明(政経4年)、出雲雄人(政経4年)、國原悠杜(政経4年)、高橋昂大(政経4年)
中央図書館 3階
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中央図書館3階のLC(ラーニング・コモンズ)は、個人の学習のために設計されている。「ブラウジング(コモンズ3)」は、心地よい環境で読書をしながら知識を得られるエリアで、雑誌、新聞、文庫本などの書架の周囲にリラックスできるソファが設置されている。バックナンバー書庫も隣接しており、過去の膨大な雑誌・新聞を探しにいくことも可能だ。「ワーク(コモンズ4)」には、仕切りのついた机が設置され、個人作業に集中することができる。「Quiet Area」や「Silent Area」と違い、会話は可能で、多少の雑音があったほうが集中できるという学生の声に応じて設定された。
緻密な設計の結果、学生たちはエリアごとのコンセプトに沿った利用をしており、来館者も増加している。今回の改修は他大学と比べても特徴的であり、LCの導入を検討する大学図書館からの視察依頼などもあるという。今後も効果検証結果などを反映させた改善が進められる予定であり、さらなる進化が期待される。
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ワーク(コモンズ4)。圧迫感の少ない半透明の仕切りで区切られた個別ブースは会話が可能で、共同作業や相談をしながら学習に取り組むことができる
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ブラウジング(コモンズ3)。ソファやハイバックチェア、個人用のテーブルが設置され、長時間滞在できるように設計されている
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「就職活動中でマスコミ業界を志望しており、時事問題や業界動向を知るために、ブラウジング(コモンズ3)で雑誌や新聞を読んでいます。種類が豊富で、空き時間にゆったりとソファに座って読書ができるので快適です。論文を書くときなどは、バックナンバー書庫で過去の学術雑誌を探したりもします。パソコンを持ち込めば、就職活動と論文作成を並行して進めることができます」 新垣 陸(教育3年)
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